非ネイティブのための英語面接 30 日プラン
30 日で英語力そのものは大きく伸びない。それでも、面接に必要な 200 ほどの文は、千回言ったかのように滑らかにできる。実際に千回言うからだ。

試されているものを見極める
英語面接は、英語力そのものの試験ではありません。自分の仕事の話を英語でできるかどうかの試験です。範囲はずっと狭く、自分のプロジェクト、決めたこと、数字、専門分野の語彙に限られます。文学の議論を求められることはありません。
この読み替えがプランのすべてです。「英語を伸ばす」のはやめましょう。実際に使う 20 の話を、その範囲でなら本当に流暢だと言えるまで練習します。
範囲は数えられるほど小さい。自己紹介が 1 本、STAR の話が 6 本、必ず聞かれる質問が 10 個、こちらから聞く質問が 5 個。合わせても 200 文に届きません。だから初週に単語帳を買ったり、リスニングのポッドキャストを始めたりしないでください。時間はすべて、実際に口から出すことになる文に使います。
1〜10 日目:書く
6 つの STAR の話を英語で書きます。各 5 行、話し言葉で書いてください。声に出しては言わないような気取った単語は使いません。自己紹介(45 秒)、「なぜこの会社か」、逆質問も足します。
書きながら声に出して読みます。紙の上でつっかえる文は、本番では崩れます。今のうちに簡単にしておきましょう。短い動詞は、立派な名詞に勝ちます。
11〜20 日目:話す
毎日録音します。1 話 1 テイク、スマホを目の前に置くだけです。1 回聞いて、ひどいつまずきを 2 か所メモし、もう 1 テイク録ります。1 日 20 分、3 テイク目はなしです。磨きすぎると台本になります。
自分の分野のテックトークや決算説明を、1 日 10 分シャドーイングします。音声を流し、話し手の少し後ろについて繰り返すだけです。アクセントを真似る必要はありません。借りたいのはリズムとつなぎの言葉で、回答を流れさせる「so」「which meant」「the trade-off was」がそれです。
話す速度は 3 割落とします。非ネイティブは緊張すると速くなり、速くなると語尾が消えます。ゆっくりはっきりは、速くて曖昧に必ず勝ちます。間も弱点ではありません。「Let me think for a second」と言って本当に 2 秒考えるほうが、質問の周りを声に出してぐるぐる回るよりずっとよく聞こえます。
21〜30 日目:相手をつけて話す
ここで相手を足します。友人でも、チューターでも、追撃で遮ってくれる人なら誰でもかまいません。鍛えるのは、台本から外されたときに英語で立て直す力です。これだけは録音では身につきません。
40 分の模擬面接 3 本は、独りで過ごす 30 時間に勝ります。本番の最初の 15 分で話すことは、すべて一度は声に出したことがある状態にしておきましょう。
模擬面接のルールは 1 つだけです。途中で日本語に戻らない。単語 1 つでも戻らない。詰まったら「I lost my train of thought, let me start over」と言います。この文だけ単独で練習しておいてください。必ず使います。
最後の 3 日は新しいものを足しません。6 本の話を最後にもう一度ずつ語って、あとはよく寝ます。前日に覚えた文は本番で保ちませんし、すでに練習して定着した文を押し出します。
聞き取れなかった 3 秒が、残りの面接を決める
非ネイティブが本当に怖いのは、話せないことではありません。聞き取れないことです。そして「聞き取れない」には 3 種類あって、直し方はそれぞれ違います。見分ける時間はだいたい 3 秒。音が届かなかったのか(回線の問題)、音は届いたが知らない単語が 1 つあるのか(語彙の問題)、単語は全部わかるが何を聞かれているのかがわからないのか(意図の問題)。3 つとも「Sorry?」で処理すると、同じ文が同じ速さで返ってくるだけです。
減点されるのは聞き返すことではありません。当てにいくことです。違う質問に 2 分答えて、相手が丁寧に「That’s helpful, but what I meant was…」と言う。その 2 分は消えます。落ち着きも消えます。そのうえ残りの質問に使える時間だけが減ります。
日本語の相槌は、ここで裏目に出ます。わからないまま「はい、はい」とうなずく癖をそのまま持ち込むと、「yeah」「right」「mm-hmm」は相手には理解の合図として届きます。相手は先に進みます。あなたは聞き返す機会をそこで失っています。わからないときはうなずかない。うなずきを止めて、下の 3 つのどれかを言う。それだけです。
聞き返すのは恥ずかしい。英語面接では、この直感が逆です。向こうの読み取りはたいてい一行で、「この人は何を聞かれているのかを確認する人だ」。それは、この人と 1 年一緒に働くとどうなるかとほぼ同じ意味です。だから模擬面接では、わざと速い質問と、わざと曖昧な質問を 1 つずつ混ぜてもらってください。本番で初めて言う「Could you say that again」と、10 回目の「Could you say that again」は、声がまったく違います。
- 音が届かなかった:「Sorry, could you say that again?」相手は繰り返してくれますし、頼まなくてもたいてい速度を落とします。1 回の面接で 2 回使っても普通の範囲です。
- 知らない単語が 1 つ:「What do you mean by runway there?」その単語をそのまま投げ返します。「わかりません」と言うより印象がよく、ちゃんと聞いていた証拠にもなります。
- 単語はわかるが質問がわからない:「So you’re asking how I handled the timeline, is that right?」自分が受け取ったバージョンを声に出して、相手に直してもらいます。考える 3 秒も同時に買えますし、ネイティブが毎日やっていることです。
訛りは直さなくていい。通じない音だけ直す
訛りと明瞭さは長いあいだ一緒くたにされてきましたが、別の話です。大きい会社はどこも訛りだらけで、訛りで落ちる人はいません。高くつくのは、相手が聞き取るために努力しなければならない状態のほうです。30 分たてば相手は疲れます。疲れた人の評価は下がります。偏見ではなく、注意力の限界です。
日本語話者の失点はほぼ決まっていて、数も多くありません。いちばん大きいのは、子音のあとに母音がついてしまうことです。日本語は「ん」を除いて子音で音を終えられないので、英語では 1 音節の text が、テ・キ・ス・ト と 4 拍になります。asked も products も同じように膨らみ、相手の耳は単語の切れ目を見失います。語尾の t、k、d、s を、母音をつけずに止める。ここだけで通じ方が変わります。r と l、b と v、th と s も日本語では 1 つの音に潰れますが、文脈が助けてくれるぶん実害は語尾ほど大きくありません。
もう 1 つはリズムです。日本語は 1 拍ずつ同じ長さで並べる言語で、英語は強い音節を長く強く言い、それ以外を潰す言語です。全部の音節を等間隔で丁寧に並べると、音が正確でも相手は強勢の位置を見つけられません。単語の輪郭が出ず、文がのっぺりします。日本語は高低で語を区別し、英語は強さと長さで区別する。ここを取り違えると、正しく発音しているのに伝わらないという、いちばん報われない状態になります。
カタカナ語はとくに危ない。日本語として知っている単語ほど、日本語のアクセントのまま口から出るからです。career は「キャリア」ではなく ca-REER、engineer は「エンジニア」ではなく engi-NEER、percent は per-CENT。image、message、damage のような -age 系は、日本語だと後ろを伸ばしますが、英語は前を強く言って後ろを潰します。知らない単語より、知っているつもりのカタカナ語のほうが通じません。
そして和製英語。クレーム、テンション、コンセント、マンション、リストラ、スキルアップ、コストダウンは、英語では通じないか、別の意味で届きます。プレゼン、アポ、リスケのような略語も英語には存在しません。面接で使いそうなカタカナ語を 10 個書き出して、英語で何と言うかを一度だけ調べておく。本番で気づくと、そこで 10 秒止まります。
直し方は、発音を一から習い直すことではありません。それは何年もかかる工事です。自分の分野で避けられない単語を 15 個選びます。職種名、使っているツール、業界用語。それぞれアクセントがどこに落ちるかを 1 回だけ調べる。声に出して録音し、語尾を最後まで言えているかを聞く。1 日 10 分を 1 週間で違いが出ます。英語を直しているのではなく、15 個の単語を直しているからです。
数字と固有名詞が、いちばん固まりやすい場所
話は順調に進んでいて、そこで予算の規模を言うことになる。気づくと文の途中で暗算しています。数字は、英語が達者な人でも同じように固まる唯一のカテゴリです。日本語は 4 桁で区切り、英語は 3 桁で区切る。万と億の切れ目は、thousand と million の切れ目とどこも重なりません。3000 万は thirty million、1 億は one hundred million。2 つの目盛りを頭の中で合わせているあいだ、あなたは話していません。換算しています。
日本語話者にはもう 1 つ罠があります。年です。頭の中の職歴が元号で並んでいると、英語を出す前に必ず変換が 1 段はさまります。職歴の年は先に全部西暦に直しておきましょう。それから、年度と暦年は別物です。2015 年度と 2015 年は始まりも終わりも違うので、the fiscal year starting in April 2015 のように、どちらの意味かがその場でわかる言い方を決めておきます。
解決は速く換算することではありません。先に換算して、書いて、声に出しておくことです。6 本の話に出てくる数字は、ひとつずつ丸ごと 1 つの英文にして覚えます。覚えるのは数字ではなく文のほうです。「roughly thirty million yen」「a team of twelve」「about a two-million-dollar budget」。ついでに年の読み方も練習しておく。2015 は twenty fifteen、2007 は two thousand seven。この 2 つの読み方を行き来するところで、多くの人がつまずきます。
固有名詞も同じです。前の会社の日本語名、社内システムの通称、日本の業界にしかない言葉。どれも文の途中で落ちる穴です。1 つにつき言い方を 1 つ決めて、毎回それを使います。会社名は英語の登記名かローマ字表記。社内システムは our internal ordering system のような説明に置き換えて、その場で訳さない。日本にしかない仕組みや言葉は、半文だけ説明してすぐ話に戻る。あなたが話しているのは自分が何をしたかであって、日本の業界の入門講義ではありません。
日本語のまま英語にした文は、あなたを値引きする
日本語の丁寧さは、英語では自信のなさとして読まれます。「あの案件は一応、私が担当していたと思います」をそのまま訳せば I think maybe I was kind of responsible for that project。中身は I led that project と同じで、信用度は半分以下です。maybe、I think、just、a little bit、sort of。この 5 つが録音に何回出てくるかは、相手があなたをどれくらい信じるかの目安になります。11〜20 日目の録音は、これを捕まえるためにあります。1 回聞いて、丸をつけて、数える。
次に謙遜です。日本語なら成果を語る前に「大したことではないのですが」「まだまだ力不足で」と置くのが礼儀ですが、英語ではそれは謙遜ではなく事実の申告として受け取られます。「勉強させていただきました」を It was a good learning experience と訳すと、あなたが何を成し遂げたのかは文から完全に消えます。数字と結果を先に言って、そのあとで足りなかった点を自分から 1 つ挙げる。順番を入れ替えるだけで、謙虚さは残り、成果も残ります。
3 つ目は「私たち」と「私」です。日本語は主語を落とせるので、そのまま英語にすると全部 we になります。相手はあなた個人を評価できません。かといって全部 I にすると、チームの仕事を取り上げているように聞こえます。使える切り分けは、状況は we(Our team was three weeks behind)、行動は I(I rewrote the sync layer)、結果はまた we(We shipped it two weeks late instead of two months)。話術ではありません。日本語では省いてよかった主語を、英語で戻しているだけです。
4 つ目は responsible for。日本語の「担当」は何にでもつく万能語ですが、英語の responsible for は弱い。職務範囲を説明しているだけで、何をしたかを言っていません。本物の動詞に替えます。led、rebuilt、negotiated、cut、shipped、hired、shut down。responsible for が 6 回出てくる回答と、違う動詞が 6 つ出てくる回答は、経歴の厚みがまるで違う 2 人に聞こえます。
本題が始まる前の 5 分が、本題より難しい
6 本の話は完璧に仕上がっている。そして面接は「How are you doing today?」で始まる。接続は問題ないか、そちらの天気はどうか。そこで固まります。雑談には範囲も構造もなく、話題はあなたが唯一準備しなかった日常です。試験の用意をしていったら、会話から入られた。
これは前座ではありません。第一印象はこの 5 分でできますし、多くの面接官はここで 1 つのことを見ています。この人は英語の会議に座っていられるか、話を遮られたあとに自分で戻せるか。それが相手のチームが毎日必要としている力です。用意した答えがどれだけよくても、最初の 30 秒の硬さは残ります。
日本語話者がここで固まる理由はもう 1 つあります。日本語では会話の入口と出口が定型で埋まっているからです。「お世話になっております」「よろしくお願いします」「お疲れさまでした」に当たる英語はありません。だから入口と出口だけ、自分で文を決めておきます。入口は Hi, thanks for having me. Nice to meet you. 出口は Thanks for your time, I really enjoyed the conversation. 2 文で足ります。
雑談も書いておきます。どの日でも出せる小さい話を 3 つ。今週は何をしているか、最近何を学んでいるか、先週末に何をしたか。各 2 文、長くしない。返す球も 1 つ用意します。How about you, has it been a busy week? 雑談はラリーなので、受けるだけで返さないと 1 手で切れます。最後に本題へ渡す文も練習しておく。相手が切り出すのを待たずに、自分で進められます。Anyway, thanks for making the time. Should we get started?
「英語は母語ではありません」と自分から言うべきか
たいていは言いません。開口一番に Sorry, my English is not very good と言うのは、相手がまだ何の判断もしていないうちに、減点の理由を代わりに書いてあげる行為です。そのあと相手が聞き取れなかったとき、原因はいつもあなたが今認めたことに割り当てられます。回線でも、相手の耳でも、その単語がもともと珍しかったせいでもなく。しかもこの申告はたいてい不正確です。心配して言う人ほど、自分で思っているほど下手ではありません。
例外が 1 つあります。2 問続けて聞き取れず、空気が固まったとき。ここでの一言は場をほどきます。ただし後ろ向きにではなく、前向きに言う。Sorry, my English is bad ではなく、English is my second language, so please tell me if I am not being clear. 前者は謝罪です。後者は、これからどう進めるかの取り決めです。まったく別の人に聞こえます。
関連する判断がもう 1 つ。求人票やリクルーターが、この職は毎日アメリカのチームと通話する、会議を仕切る、顧客に説明すると明言していて、自分の英語がちょうどその境界線上にあるなら、正直に言うほうが押し通すより安く済みます。今どのあたりにいて、何をしていて、どれくらいで届きそうか。その一言で落ちる職なら、入っても苦しい職です。差は入社では消えません。オンボーディングが終わったあとに出てきて、そのときのほうが直しにくい。
当日の朝、口を温めておく
最初の 1 分は、その日いちばん出来の悪い 1 分になります。緊張のせいというより、体のせいです。一日中日本語を話していた口が英語に切り替わるには時間がかかりますが、面接官はそれを待ちません。最初の一文から評価が始まります。だから暖機は、面接が始まる前に終わらせておきます。
開始 30 分前に、10 分間、声に出して英語を話します。声に出して、です。頭の中で読んでも、温めたい筋肉は温まりません。内容は何でもかまいません。自己紹介を 2 回通す、昨日やったことを英語で言う。11〜20 日目の録音が残っているなら、1 本流して一緒に話すのがいちばん楽です。目的は 1 つだけ。面接の最初の一文を、その日最初の英語にしないことです。
あと 2 つ。待っているあいだに新しいものを覚えようとしないこと。30 日で作れなかった文が 10 分で生えることはありませんし、直前の記憶は、練習して定着したほうを押し出します。それから、机に水を置くこと。緊張すると喉が渇き、渇くと声が震え、自分の震えた声が聞こえるともっと慌てます。ばかばかしいループですが、水を一杯置くだけで切れます。
ガイドが扱うのは面接の場での話です。その場に呼ばれるかどうかは、レジュメで決まります。自分の言葉で書けば、10 秒で英文ページに